納涼特集 不思議な話し 「古い木造のトイレ」
小手調べですが、この話しは不思議と言うよりも、不気味と言った方があっているかもしれません。
小学校・中学校の頃、用を足すのに、小はともかく、大を催すと途端にクラスで大騒ぎされたものです。
一体何がそんなに囃(はや)し立てる必要があったのか?今もってわかりませんが、まぁ、そんな時代でしたね。
大昔、私が中学生の時、鉄筋の校舎で授業を受けていましたが、木造の校舎が一部残っていました。
ある日、大を催しまして、幸い昼休みの時間はまだあるものの、うっかり口に出すと
「わぁ~、ウンコしに行くぞぉ~!」
とアホガキが騒ぐので、鉄筋の校舎では見つかってしまう。
どこか落ち着いて用を足せるトイレは無いものか?と思いを巡らすと・・、あった!
木造の校舎からつながっている、長い渡り廊下の突き当たりに、古いトイレがあったのです。学校内でも端に有り、新校舎から大分離れていました。距離に加えて木造トイレのため、現在使用する人はほとんどいない。鉄筋の校舎はとっくに水洗式でしたが、木造の方は、写真のような古式スタイル。古くさいけど、仕方がない。
あそこなら、落ち着いて用を足せるのだ!
腹具合を診るに、のんびりしてはいられない!そ~っと教室を抜け出すと、私は木造校舎に向かいました。スノコが敷いてある長い渡り廊下を通り、木造トイレにたどり着く。念のため、後ろを振り向くが、誰もいない。
やれやれと思いながら、トイレに入る。かつては多くの生徒に利用されたが、今ではひと気も無く薄暗い。シ~ンとして、やや不気味だ。男用トイレの中は長方形で、小用は左側、大用は右側に奥まで5個の個室があった。木の扉はみな閉まっていた。手前の個室に入るも、尻拭き紙が湿っぽい。いくら下に使うとはいえ、気持ち悪いので、ひとつ前の個室の扉を開ける。同じく湿っぽいが、先ほどの紙に比べればマシだ。早速しゃがんで、排泄作業に入る。・・・遙か遠くの校庭から、戯れている生徒の声がかすかに伝わってくる。安堵感と共に、宴もたけなわを迎える、と思った次の瞬間!誰かがトイレにはいってきた!わずかな足音は、さっき私が開けた個室に入り、木の扉をゆっくり閉めた。写真と違い、実際のトイレは、便器が壁に平行になっており、要は足音の主は、私のま後ろにいるわけだ。身体が、無意識にこわばる。
・・・静寂が異様に長く感じる。
突然!
「・・・湿ってるね」
と静寂を破り、大人とも子供とも判別しづらい、男の声が話しかけてくる。紙のことを言ってるのだろうが、私は違和感を感じた。トイレに入る前、周りを見渡したが、誰もいなかった。だから、クラスメートがふざけて入ってきたとは思えないし、知らない声だ。また、真後ろの主はノックもせずに、どうして前の個室に人がいることがわかったのか?しかも親しげに、気味の悪い声で!
背筋がぞ~っとして、尻の方ではモグラ叩きゲームのように、出かかった頭が、またスルッと元に戻った。もう、いい!残りは、家に帰ってゆっくり出そう!
作り話しなら、隣りの個室ドアを開けたら誰もいなかった、なんてオチになるんだろうけど、現実の世界にいる私は、この薄気味悪い現場から一刻も早く立ち去りたかった!
いるべきではない、と感じた!
そそくさと、尻を拭き、私は木造トイレを後にした。
昼休みの終わりを告げるチャイムも鳴りそうだ。
こんなギリギリの時間にトイレに来て、あの余裕がある言葉は何だ?一体誰なんだ?
・・・何てこともない体験ですが、当事者にとっては、不気味で不思議な思い出です。
をはり
☆また、約一週間後に納涼特集新ネタを提供いたします!