ダメだこりゃ! ・ドリフターズリーダーの自叙伝を読んだマルチ考察
先月、ドリフターズのメンバーのひとり、仲本工事氏が事故で亡くなられました。
当院から割と近い、緑ヶ丘にお住まいだったのですね。またひとつ消えゆく昭和を寂しく思っていたところ、本屋で「ダメだこりゃ!」というタイトルの本を見つけました。そう、ドリフターズのリーダーであったいかりや長介氏の自叙伝でした。先程の思いをなぞらえるつもりで手に取りました。面白くあっと言う間に読み終えてしまいました。色々と参考になる点がありましたので、以下に記したいと思います。
●「意外なドリフターズ結成と経緯」
若い人が聞いたら意外に思うでしょうが、ドリフターズのメンバーは大きく前期・中期・後期に分けられるのです。いかりやさんは3代目のリーダーであり、前期のメンバーは後にドリフターズを辞めドンキーカルテットを立ち上げた小野ヤスシ氏、ジャイアント吉田氏などがいました。加藤茶氏も辞める予定でしたが、いかりや氏に脅され残ることに。
そして穴埋めとして、荒井注氏、仲本工事氏、高木ブー氏が新たに加わり、中期の時代が始まります。後期は、荒井注さんが辞めた後に入った、志村けん氏を中心にした時代。
●「リーダーとしてのいかりやさんの信念」
リストラやメンバー入れ替えをやらずにやっていくことを決めました。離散集合が当たり前の時代では画期的な考えでした。
●「演奏は4流、笑いは素人のドリフターズがなぜ一世を風靡できたのか?」
4流というのは、いかりやさん自身が語っていた自虐言葉です。ですが、シャレではなさそうでなのです。
☆口うるさいパワハラ上司のいかりや長介
☆ピアニストなのに、ピアノが弾けず、逆ギレする荒井注
☆若さとハチャメチャな元気だけが取り柄の加藤茶
☆本番で寝てしまう高木ブー
☆器械体操は得意だが、ネタは作らず、節税知識ばかり勉強する仲本工事
このメンバーで、発展できるのか?
まさに、ダメだこりゃ状態!
ところが、いかりや氏は個性として逆手に取りました。
手を加えず、ハーモニーを大事にしました。
テレビ時代を把握し、同じネタを繰り返す玄人受けをやめ、新ネタ作りに精をだすという先見性。
これが見事に大当たり!これらは現代のマーケティング理論を先駆ける判断でした。
売りたい商品に手間暇をかけるのではなく、見せ方にこだわった点。
新ネタ作りは、常に新しいものを求めるスピード時代に合わせたもの。
●「自分らしさを貫いたメンバー」
ビートルズの日本公演の前座を務めたドリフターズですが、マッシュルーム頭の連中に興味などなかったと言い切るのだからすごい。
一度断ってもしつこく頼まれたのでやむなく引き受け、「観客は俺たちに興味なんてないんだから、早く終わらそうぜ!」と早々に終わる。通路でビートルズとすれ違ってもお互い挨拶も無し。
それどころか楽器がぶつかり、変な音がしても、お互い舞台と控え室に淡々と向かう。
彼らはコメディーで売ってきましたから、表面的な言動を鵜呑みにするわけにはいきません。
ですが、メンバーから感じるのは、自分らしさを貫きたい!という気持ち。荒井注氏、加藤茶氏、
そして亡くなった仲本工事氏、共通しているのは歳の差婚。皆さん、20から30歳の差を乗り越えてです。
葬儀で仲本氏の奥さん(内縁)に向かって加藤茶氏は、
「仲本を殺したのは、あんただからな!」と不義理な行いを怒ったそうです。
生前、ある記事のインタビューに仲本氏は答えていました。視聴率50%を誇ったドリフターズの全盛期の頃、
「苦しいことばかりで、楽しいことなんて何ひとつなかった」
意外な言葉に私は驚きました。それでも長年勤め上げたのは、仕事に対する愛着以外の何ものでもないでしょう。
加藤茶氏は、晩年の仲本氏に同情していましたが、案外、ご本人は幸せと感じていたのかもしれません。
「俺が良いと言ってるんだから、いいじゃない!」
臨終の時、もし仲本氏が口を聞けたらそう言ったかもしれません。
娯楽が少なかった小学生の頃、ドリフターズの生公演を見る為に、館外で何時間も待ち続けたことを思い出した次第です。
合掌