納涼 不気味な話し 「お堂の一夜」
当院受者のAさんは、若いのに体験豊富な方です。
また、非常に霊感も強く、古いマンションにいた時、金縛りが頻繁に起こり、お香や塩を撒いて凌いだとか。
そんなAさんは、以前、四国33カ所の巡礼の旅路も経験しています。
ところが、一度だけ不気味な体験をしたんです!と話し始めました。
旅路も中程に来たある日、夕方になって大雨が降ってきたそうです。急なことで、宿泊もままならず、見ると古いお堂があり、やむなく中で休むことになりました。自分ひとりではなく、巡礼姿の人含めて複数の人が一斉に雨宿をするハメになりました。 ところが、雨は一向に止まず、無人のお堂でしたが、一晩やっかいになるしかありませんでした。 古いお堂は薄気味悪かったものの、幸い自分ひとりではないので、とりあえず仮眠を取ることに。
他のメンバーも、昼の疲れが出たのか、荷物などを枕にうたた寝を始めると、時は夜になっていました。 ところが、大雨で誰もいるはずが無いお堂の周りで、足音が聞こえはじめたのです! バシャ、バシャ!と。
雨に濡れた地面を踏む、独特の音を響かせながら 足音は、グルグルとお堂の外を周り始めました。 中にいたメンバーも何人か気づいたようですが、大雨の夜中に行く所もなく、夜が明けるのを待つしかありませんでした。外に顔を出して確認する勇気は誰も無かったものの、お堂の中に足音が入ってくる気配がないことだけは幸いでした。こんな状況でいつまでも聞こえる足音が、この世のもので無いことは誰にもわかっていました。
永遠に続くかのように思えた雨音と足音も、夜明けと共に鳥のさえずりに代わりました。
まだ、早朝でしたがお日様が顔を出していたので、メンバー一同、そそくさとお堂を出ていきました。 Aさんは、解放感からか、地元の人に何気に声をかけました。
「いゃあ、昨晩は大雨であのお堂に泊まりましたよ!」
と言うと、地元の人は、
「えっ、あんな所に泊まったの?地元の人間だって気味悪くて近づかないのに、よく夜中に泊まれたね!」
と話してきました。
特別、いわくのある場所では無かったようですが、何かがいたのは間違いありませんでした。
因みに、松本清張原作に「砂の器」という長編推理小説があります。
映画化されて観た人も多いと思います。昔から続く巡礼の方達の中には、村を追われ、行くあての無い旅路もあったようです。様々な想念が蓄積した四国33カ所は、不思議なことがあっても当然なのかもしれません。「砂の器」をご存知ない方は、是非一度観られることをお勧めします。