とび職の言い伝え
毎月、健康維持に来院されているおひとりに、Oさんという年配の方がおられます。長年とび職を生業にされていましたが、今年始め、めでたく引退されました。私はねぎらいも兼ねて、ある事を確認しようと試みました。
それは、以前建築関係の人から、とび職の親方とのやり取りで、不思議な話しを聞いたからです。
何でも、工期が押しているので、早いとこ仕事を終わらせてほしいのに、とび職の親方がガンとして休むというのです。別に仕事でもめたわけでもなく、具合が悪いわけでもなく、また自分だけでなく、若い衆も全員休ませると言うのです。困った建築関係の人が
「親方~、頼むよ~!一体どうしたのぉ~!」
と泣きつくと、口を真一文字にしていた親方が、ふと、ほころばせ
「・・あんたとの仲だから、本当の事を言うよ。実は、現場で○○を見たんだ!」
「はぁ?」
「昔から、俺たちの世界では、現場で○○を見たら、絶対に仕事をしてはならない!という言い伝えがあるんだ」
親方は言葉を続け
「実際、現場で○○を見ても仕事を続けた奴は、必ず怪我したり、落っこちたりと、ロクな事がなかったよ」
口をアングリと開けている建築関係者をよそに親方は「だから、今日は仕事はダメ!」
と一方的に話しを終わらせました。
この話しを聞き、さぞや、困ったろうなぁという同情心以上に、真偽に興味がでました。
待てよ、考えみたら、毎月来院されているOさんが、プロのとび職じやないか!
地域によって、多少の違いはあるかもしれないが、よし、いっちよう確認させていただこう!
私は、Oさんが来院される日を楽しみにしていました。
当日、お身体の状態を聞き施術に入り、頃合いをみてから私は長年のねぎらいと共に
「Oさん、ちょっとお伺いしますが、とび職の世界で、現場で○○を見たら仕事をしない、という言い伝えは本当ですか?」
と聞きました。するとOさん.意外にもスムーズに
「本当です。でも、幸い私は見たことはないけどね」
と教えてくれました。
○○の正体?!
一体何だと思いますか?
答えは・・・
子供 です!
まだとび職が出入りする、建物の作り始めの粗い現場に、子供の姿を見ることはありえません。
気持ち悪いなぁと思いつつ、私は推理してみました。何かの話しと似ている・・、そうだ!座敷ワラシだ!
座敷ワラシは、見ると幸運に恵まれるけど、建築現場では逆バージョンかな?
いや、違う!子供の姿を見て、仕事をしなければ怪我や不運に巻き込まれないのなら、 警告 として捉えられないだろうか?
「今日は、危ないぞ!仕事は休め!」という暗示なら、決して忌み嫌うものではなく、ある意味、座敷ワラシと共通するものではないか?
と私は結論しました。不思議な話しですが、今の若い職人さんにも伝わっているのでしょうか?子供よりもポケモンをスマホで見つける方に、気を取られているかもしれませんがね。
不思議な話し をはり