モハメッド・アリ氏死去 中編
当時のヘビー級ボクシングの「ゴリラのように歩き、クマのように殴る!」というイメージに、アリ氏は革命を起こしました。
「蝶のように舞い、蜂のように刺す!」力任せの打ち合いではなく、
華麗なフットワークと神がかりなディフェンスで翻弄し、自分よりパワーが上の選手をKOしていきます。
頭も良く、彼が白のトランクスを好んで履いていたのは、より速く見えるという心理効果を狙ってのことでした。勝ち星が続くと慢心し、怠惰な生活を送ってしまうのが、世の常。彼もそのひとりになりそうだったある日、有名なマルコスX氏と出会います。マルコスXは講演会で、白人を口撃する反面、黒人に自負と誇りを持てと励まします。
講演を聞いて感動した彼は、ブラックモスリムに入信し、リングネームを今までのカシアス・クレイから、モハメッド・アリに改名します。彼にとっては、精神面で強い支えになったようです。カシアス・クレイの時、日本にも立ち寄ったことがありますが、ヘビー級チャンピオン、クレイが来ている!と大騒ぎになりました。彼は、銀座のクラブで飲んでいましたが、店を出ると銀座中の人間が集まっており、クレイ!チャンピオン!と囲んで大合唱になりました。
どこに行っても温かいもてなしに、アリ氏はすっかりご満悦だったそうです。ベトナム戦争が勃発し、アメリカでは一般人から徴収をかけました。先の日本での思い出も加わったのかわかりませんが、アリ氏は「黄色人種は、君ら白人のように、我々黒人をバカにしたり、差別したりしない!だから、闘う理由が無い!」と宗教上の理由も加え、兵役を拒否しました。結果、チャンピオンの座を剥奪され、試合も3年近く禁止されました。天命殺の時期だったようですね。やがて辛い時期を乗り越え、最高裁判決で無罪を勝ち取ります。
晴れて、リングに復帰できるのです。しかし、天命殺はまだ終わっておらず、復帰戦でフレイジャーから、初めてのダウンを経験し、ノートンには、顎を骨折させられます。
それでも落ち込まず、ケアに専念し、体調も復ました。アリ氏の人生には、3つの難関があったと思います。ひとつは先の、国との最高裁裁判。ふたつめは、台頭してきた若き怪物ジョージ・フォアマンとの対決です。それは・・・
続く