開票立会人 後編
当初は、ハイペースで束になった票が回ってきました。緊張していた我々立会人も段々要領をつかみ、チェックのハンコもスムーズに押し続けました。
この調子なら深夜零時前に帰れるかな?と密かな期待がでてきました。
それにしても、公務員方の仕事の進行鮮やかなことには、感心させられました。恒例行事で慣れているとはいえ、滞りなく仕事を進めます。投票箱から票を取り出し、最初にまとめていたメンバーが、当然一番早く務めは終わります。場内アナウンスで
「○○地区の人、起立して下さい。退場して下さい。はい、次は△△地区の人~」
てな調子で、あれだけ賑わっていた体育館中央から順次人がいなくなります。規律正しさは、DVDで観たナチスの党大会のようです。
みんな明日の夜には、お疲れ様でしたぁ~と、一杯呑みに行くんだろうなぁと、横目でチラ見しながら、私は終わらぬ作業を続けます。
私なりに抜き打ちで、同じ筆跡や、怪しげな票が無いかチェックしました。整体という仕事柄、初めての方には、直筆でカルテに必要事項を記入して頂いています。別人でも、似た筆跡というのはあるもので、その記憶から、やや怪しげな票でも確信を持てず、流れに沿って作業を進めました。
深夜零時を回りました。大まか開票は終わっています。滞っているのは、何を書いてあるのか判別しがたい票を体育館の隅で、精査しているからです。どうして判別できない票を、無理にこじつけて有効にしようとするのか、私には理解できません。
この不良票のお陰で、時刻は深夜2時を回りました。我々立会人もトイレに行ったり、販売機で飲料を買いに行ったり
間をつぶしました。
忘れた頃に、わずかに票が回ってくるペースになりました。
初めての体験と、深夜に及ぶ作業で、さすがに疲れてきました。深夜3時!
やっと、係員から終了を告げられました。
約束通り、2万円を頂戴し、外に出ると無料タクシーが待機しています。
相乗りで、順番に我が家近くに降ろしてもらうと、時刻は午前4時近く。日本国の為に働けたのか、良くわからない体験でした。
後日、新聞・雑誌・ネットで確認すると、多数筆跡の似た票や、怪しげな票を徹夜して承諾のハンコを押さず、粘ったツワモノがいたことも知りました。絶対の確信が持てない私には、とてもマネできませんでした。
ともあれ、身近な選挙でも、少し角度を変えると随分違う景色が見えるものです。
☆暑いですね、約1週間後には納涼特集として、不思議な話しをお披露目したいと思います。