夏季限定 不気味な話し「不気味なスタッフ Kの場合」
私は、開業する前、とある健康産業の会社にスカウトされ、マネージャーとして、入社しました。
今では、どこにでもリラクゼーションの店はありますが、そのハシリのようなものでした。
直営・フランチャイズ共に急展開しており、深夜2時・3時からの会議なんぞあたりまえ。2年間在籍して、完全休が取れたのは、大晦日と元旦だけでした。
仕事は事務所だけでなく、数ある現場のスタッフの管理もありました。クセのある連中ばかりで、特に二人の男性スタッフが印象に残っています。そのひとり、kのお話しをいたしましょう。(もうひとりのWは、男性ブログに掲載しております。良ければ、そちらもご覧ください)
店は数多く出店しておりましたが、世田谷店でのことです。
私は自分の下に、各店の責任者を養成し、主任という立場を与えました。私は総まとめする役目です。ある昼過ぎのこと、珍しくトラブルも無いので仕事を切り上げ、喜び勇んで陽も明るいうちに車で自宅マンションに帰りました。
毎日、深夜まで働いているので、たまにはゆっくり休みたい!こんな半休の日だって半年ぶりのことでした。シャワーを浴びて、軽食を済ませてから、ベッドに倒れこむ。休める幸せをかみしめながら、まどろみ始めました。
ところが、深夜1時に携帯電話が鳴り響きました。せっかくの休みなのに!嫌な予感がしながら電話に出ると、世田谷店を任せている主任からでした。
「マネージャー、お休みのところすみません!実は、店の鍵が見当たらないのです!」
と慌ただしい口調。世田谷店は、受者がいなければ、ラストは深夜1時で閉店します。店を閉めようとしたら、置いてあるはずの鍵がないので、スタッフ全員で探して、騒いでいるのです。折角の休みをつぶされ、私もムカつきながら、車で世田谷店に直行しました。
店に着くと主任を筆頭に、机を動かしてみたり、みんなで必死に鍵を探しているところでした。
「まだ見つからないの?」
私が顔を出すと、ホッとした顔で主任が近づいてきて
「すみません、まだ見つからないんです」
そして小声で
「マネージャー、ちょっといいですか?」
と、みんなと離れたところに私を誘導しました。
要約すると、鍵が無いなんておかしい!と言うのです。そして、Kが怪しいと。前にも変な事があったけど、私に迷惑がかかると思い、報告してなかったことがいくつもあるのだと。実は、いずれもKが現場にいる時に、異変が起きるので、奴を問い詰めたんです!と。でも、ヘラヘラ笑ってとぼけているだけ。
妊娠中の女房がいるので、いつも真っ先に帰っている筈なのに、店の近くでタクシーの運転手が良く休憩している場所にKも車を停めているところを、何度も見かけたと言うのです。
「自分が、集計を終えてからですから、通りかかるのは、いつも深夜3時過ぎなんですよ!」
と主任は付け足します。
鍵はとうとう見つかりませんでした。私が持っている合鍵で閉め、コピーを作るしかないなと迎えた次の日。何と、スタッフの休憩室の机の下に無造作に落ちていました。おかしい!あれだけ探したのに、いきなり机の下にあるなんて?
Kは、勤務態度も悪い方ではなく、髪は短く刈込み、ウエイトをやったり、明るいスポーツマンというイメージです。まさかと思いましたが、主任の言葉を信じ始めました。
表面のイメージと違う奇異な言動が目立ってきました。私が深夜2時過ぎ、世田谷店の集計をしていと、誰かが、ゆっくりと階段を上がってくるのです。誰かと思えば、Kでした。
「いゃあ、漫画を持って帰るのを忘れたんで、取りに来たんです」
と白々しい嘘を言うのです。
別の日、私が社長(女社長でした)と事務所で打ち合わせが終わり、車で自宅まで送ろうとして車に乗り込むと、20〜30m先に停車している車がいきなり発車しました。しかも、こちらを覗きこんでいるシルエットが見えました。
直感で、
「Kだ!」
と思い、例のタクシーの運転手の溜まり場まで、追っ掛けました。車を降りてKとおぼしき車の運転席を見ると、案の定、奴はいました。私が問い詰めると
「いゃあ、昼間携帯電話の電波が悪かったんで、確かめに来たんです」
と適当なことを言ってました。
後でわかったのですが、どうやら、Kは盗聴器を仕掛けていたようです。辞めるときに外していったでしょうから、物的証拠はありませんが・・。
また別の日、夜10時ころ、私が三鷹店で管理していると、社長から電話が入りました。何やら、怯えていました。何でも、今事務所に一人で戻ると、ぴったり合わせたように電話が鳴ると言うのです。実は、初めてではないとのこと。遅いときは電話に出ないのですが、同じことが何度も続くので、さっき出てみると「☆$#€♪!」と卑猥で、訳のわからない事を叫んでいたそうです。
怖いから誰か来てくれと言われましたが、私は仕事中でしたので、三鷹店の主任に速攻向かわせました。おっつけ、私も後から事務所に向かい、合流しました。
社長曰く、
「・・あの声、どこかで聞いたわ!・・そう、Kの声そっくりよ!」
事情を知っていた三鷹店の主任と私は目を合わせました。
どこかで見張っていなければタイミング良く電話など掛けられない!と言われるので、近辺にいるだろうKを探しましたが、みつかりませんでした。今で言う、変態ストーカーに該当しますが、クビにする証拠が中々見つからない。どうしたものかと思っていたら、Kの方から退職願いを申し出てきたので、即、OKを出しました。Kは「あれ、引き止めないんですか?」なんて言ってきました。誰が引き止めるかい!と私は心の中で叫び、退職願いを受理しました。
この世のものでないものも怖いですが、生きてる人間は、尚怖いですね。Kという名前の頭文字は、加藤・金田・金子とかありますが、奴の名前は今列記した名前ではありません。もし、あなたが、信頼して通っている先生の名前の頭文字がKだったら、用心してくださいね。